物足りぬ冬

「O Tannenbaum」
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
wie treu sind deine Blätter!
Du grünst nicht nur
zur Sommerzeit,
Nein auch im Winter, wenn es schneit.
O Tannenbaum, o Tannenbaum,
wie treu sind deine Blätter!

「もみの木」
もみの木 もみの木 いつも緑よ
もみの木 もみの木 いつも緑よ
輝く夏の日 雪降る冬の日
もみの木 もみの木 いつも緑よ
冬と言えば、長女の歌う「もみの木」を思い出します。日本語だったり、ドイツ語だったり、日独混ぜこぜだったりですが、幼稚園帰りの車の中で、家の中で、たどたどしい幼い声で歌ってくれました。歌詞の意味を分かっている筈も無く、シンプルな優しいメロディが気に入っていたのだと思います。

私がこの歌を知ったのは小学生の音楽の授業でした。当時は、メロディはさておき、「いつも緑よ」を繰り返す単純な歌詞に何の感慨も覚えませんでしたが、ドイツでの厳しい冬を体験して合点しました。暗く寒い氷の世界が広がる中で、もみの木の緑に感じる生命感に何度、ぐっと来た事でしょうか。家の窓から雪景色の中に見つけたもみの木の緑。灰色の空、白い雪、もみの木の緑・・・これらは私にとってドイツの冬の象徴的なイメージです。

しかし、今年は様子が違います。ドイツ最後の冬、いつもの厳しい冬はいつやって来るのだろうかと構えておりましたが、一向にその気配なし!例年になく晴れの日が続き、気温も高く、今年は稀に見る暖冬のようです。1月中旬から勘違いして咲き出した桜を見掛ける様になり、今日はとうとう、クロッカスの莟を見つけました。



「えっ、もう春ですかっ・・・・」

ここ何年かで、すっかり「過酷な冬を経て、春を喜ぶ」というパターンが定着し、すっかり「厳しい冬」をマゾヒスティックに楽しむメンタリティが形成されてしまっている私としては、なんだか物足りない今年の冬です。
あーあ、もう一回、もみの木の緑に咽び泣きたかった(笑)