ロシアのこと


先週からロシア人のサポートの女性が付いてくれて、一緒に仕事することになったり、2週間前はモスクワショーでロシア入りしたりと、この頃、これまで余り関わりのなかったロシアという国に関わることが多くて興味深い。特に先日の出張は良い意味のカルチャーショックも相俟って暫く余韻が残った。すこし振り返ってみる。

「VIPアレンジしておいたらかね♪」と、出張前に連絡があり、何の事だかよく確認せずにいたのだが、空港に着くとVIPアレンジで別ルートから特別ラウンジに通される。その間、パスポートコントロールの人混みを目にして、悟る。
「VIPアレンジ無くしては、いつ空港から出られるか分からない」。
そしてラウンジにて荷物が運ばれてくるのを待ちながら、VIPラウンジと言いながら、子供も走り回っているのを目にして、更に悟る。
「要するに、積んだお金次第なのね。。。」

空港からホテルに向かいながら、走っている車がとても古いか、とても新しいか両極端なことに気付く。これは成熟市場には見られない光景だ。高速から市内に降りて、目の前に広がるのは旧共産党時代に建てられたと思しき古いアパート群。新しい建築物が所々に入交り、なんとも言い難い景色。細かく仕切られた部屋の窓から察するに一家族分のスペースは、そう広いものじゃないようだ。この広大な土地を持つ国の国民が、こんな風に均一の細かに区分された住居に住んでいるのかと思うと不思議に感じる。隣に乗っていたVPが「それでも、最低限、全国民に住む家があったということだよね」と呟く。

そんな風にして、今まで私が仕事で訪れたいわゆる「先進国」への出張とは、まったく違う形で始まった出張だったのだけれど、エキゾチックさは止まることを知らず、毎日、どんなビックリが待っているのか、予想がつかない数日を送ることになる。
義務教育に外国語が無いので、基本的に英語が通じない。それ故に、いろんなミス・コミュニケーションが起こり、小さなことで一々トンデモナイ展開になったりする。
モスクワ市内の道路は整備されていないので慢性の交通渋滞であり、スケジュール通りに物事が運ばない。また、この交通渋滞に馴れたドライバーに至ってはリュック・ベッソンの映画「タクシー」顔負けの、ぶっとんだ運転技術で、渋滞を切り抜けようとするので、馴れない日本人には毎日のイベント会場への移動が恐怖体験以外の何物でもない。
ショーの演出も現役ミリタリー合唱団(有名らしい)に軍服姿で弊社CMソングを歌わせ、度肝を抜く。また、自動車の選択肢が出来て間もないロシアでは、取材にくるジャーナリストも総じて若く、摩訶不思議な質問が相次ぐ。。。。等々。。他にもいろいろあるのだけど、ここに書けるのはこれくらい。

しかし、次々に起こる珍事件や大渋滞、思うように物事が進まない環境にも関わらず、私は全然疲れを感じなかった。むしろ、元気を貰った気がする(おいしいウォッカのせいではない)。
モーターショー担当として私のロシア側のカウンターパートのマーシャは、日本人顔負けの残業っぷりで、だいぶ前から、大変な時間を過ごしながらも、現場でも奔走しながら、かなり粘り強く頑張っていたし、出張中、担当してくれたドライバーは、英語の辞書を車に忍ばせて勉強中だった。なりたてホヤホヤのモータージャーナリスト達は、不思議な質問で我々を驚かせながらも、好奇心いっぱいでキラキラして見えた。

コミュニズムから資本主義に移行し、駈け出したばかりのロシア。その駆け出しの明日に向かうエネルギーに、きっと元気をもらったのだ。もちろん、急激な変化故に、社会的にいびつな部分も多分にあり、今、この国を引っ張っているのは一部の限られた層ではあるのだけど。旧共産党時代と現在、ヨーロッパとアジア、富裕層と貧困層、入り混じった混沌の中で目にするエネルギッシュな光景は、残念ながら、今の日本には持ち得ないということ思うと、素直に羨ましいなと思う。

ところで、ロシア人ドライバーの運転にも驚いたが、同じくらい、物価の高さに驚愕した。あんなに何でも高額では一般庶民はやっていけるんだろうか。。。。と思うのだけど、道行く人々は皆おしゃれに着飾って歩いている。欧州の他地域での目撃情報(?)を耳にしても、かなりロシア人の使いっぷりは良いらしい。オイル・天然ガスでバンバン外貨を稼いで、バンバン消費するという流れが見える気がする。自動車屋さんにとっては「これからもバンバン使ってください♪」で済むのだけど、このサイクルをシフトして自国の産業の国際競争力に変えていかないといけないんじゃない?って少し危うさも感じるのだけど、その辺、どうなってるんでしょ。エネルギーと軍事でやってくつもりなのかしら。中国ほど、自国産業育成&保護の話は聞かない気がするんだけど。。。。