はじめてのかり

学生時代のある日、ゼミの研究室で暇つぶしをしていたら、担当教授の個室から、見知らぬおじいさんが出てきて、話しかけられた。とても正確な日本語だったけれど、少しイントネーションが違っている。聞けば、モンゴル人の客員教授で、数日間、私たちの担当教授の部屋を間借りしているとのことだった。面白そうなので、そのまま、友達と一緒におしゃべりすることにした。

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ふいに先生が尋ねる。

「貴方達、世界ノ三大偉人ヲ知ッテイマスカ?」

勿論とばかりに「キリスト、仏陀ガンジーですよね」と、答える私。(思えば、何でマホメットじゃなくて、いきなりガンジーなのか、脈絡がなくて、変な回答ではあるのだけど、そういう風に聞いた事があった。。。)

すかさず、先生。

違いますガンジーではありません。キリスト、仏陀、そして、チンギス・ハーンです!

「・・・・・」
そうか、モンゴルではそう教えるのか、、、、とやり過ごす。


今度はやおら、絵本を取り出し、私たちに差し出す。
「コレハ私ガ書イタ本デス。」

日本語で書かれたその絵本は、遊牧民の男の子が勇気を出して初めての狩りに行く話。狩りの途中で、大きな猛獣同士(なんだったかは忘れた)が戦う場面に出くわし、隠れていたら、戦いは一晩続き、朝には猛獣は二匹とも共倒れになっており、戦わずして男の子は大きな獲物を2匹も持ち帰える。初めての狩りは大成功だったという話。絵も味わい深いし、モンゴルの遊牧民の子供なんてエキゾチックだし、良い絵本だなぁと思って読む。

すると、先生、
「コレハ、私ノ子供ノ頃ノ話デス」と、言う。
へぇ、先生、遊牧民出身なの?!と感心すると、更に、
「コレハ、実話デス。子供ノ頃、私ガ本当に体験シタコトデス」と、キッパリ。
「・・・・・・(猛獣一晩戦い続けて共倒れって、、、、)」

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あれから、随分時が経ち、そんな出来事もすっかり忘れていたのだけれど、子供が生まれて、再び絵本が身近になった今、テレビで朝青龍を見る度、あの時の先生とモンゴル絵本の事が思い出された。ただ、あの実話だという絵本のタイトルだけは、どうしても思い出せなかったのだけど、今日、いきなり思い出した。

「はじめてのかり」

インターネットで検索してみたら、あった、あった(笑)

可愛くてエキゾチックな絵本、娘がもう少し大きくなったら読んであげたいなと思う。
ただ、、、、、「これは実話なのよ」と教えるかどうかは、現在、検討中。