Sandmännchenのこと

「夜になるとSandman(砂男)がやってきて、魔法の砂を撒く。それが目に入ると人々は眠くて目が開けていられなくなる」という言い伝えが、ドイツには、あるそうです。

子供向けTVチャンネルで平日の夜、まさに子供達がベッドに入る前の時間帯に放送されているSandman(Sandmännchen)の人形劇は、この言い伝えをベースに作られています。これがとてもレトロな味わいのある番組なのですが、それもその筈、旧東ドイツで放映されていたものの再放送なのです。最近は新規に作られた物も混ざってはいますが、基本は東西統一以前に作られた物です。

こんな感じの愛らしいキャラクター・・・・。

動画で流れている旧東独時代の主題歌を今も使用しているのですが、この素朴で少し寂しげな主題歌を聞くと、長女がもっと小さかった頃、夕暮れ色に染まったリビングでSandmänchenを見ながら二人で夫の帰りを静かに待っていたのを思い出して、なんとなく涙腺が刺激されます。今では2児を抱えて、この時間帯は戦争状態なんですけどね(笑)

実は以前、西独側でも同様のコンセプトで「Sandman」の番組を製作・放映していたそうなのですが、旧東側と違って、本気で「おじさん」な顔のSandmanを作ってしまっていた為に、東西統一後は愛らしさの点から東側のSandmanが採用されて今に至るのだと、旧東側出身の友人が教えてくれました。お互いSandmanの番組をみるような年の子供がいるからと言うこともあるでしょうが、「東側のキャラクターだったのよ」と何度も話題にするところに、彼女のSandmanへの思い入れを感じます。思春期の多感な時期に東西統一を経験し、生活の様々な点が西側色に塗り替えられて行く中で、旧東側時代のものが採用されたSandmanは彼女に取って、何か特別な、思い出深い存在なのかもしれません。

そんなSandmanですが、実際の番組中、彼はドイツの中に留まっていたりはしません。結構頻繁に、そのサンタクロースもどきな出で立ち(大きな袋を担いで橇等の乗り物に乗っている)で世界を旅して、現地の子供達と触合っています。もちろん、東側のイデオロギーの下で制作されていますので、大抵、旅先は当時の東ドイツの友好国が基本です。間違ってもアメリカなんて出てきません。

ところが、先日、偶然、くだんの彼女が「Sandmanが日本に立ち寄っていた回を見た」と教えてくれました。丁寧にWebのリンク付きです。http://www.sandmaennchen.de/seit_1959/fuhrpark/beitraege/dschunke_japan.html

写真を見ると、確かに日本です。Webの説明によると、この日本訪問記は、当時の東ドイツ首相のホーネッカーが日本を訪問した翌年に作られた映像だそうです。首相在職時の彼は目覚ましい経済発展を遂げた日本にとても興味を寄せていたらしいと聞きます。そんな背景を考えると友好国に加えて、西側陣営に属するとは言え、日本が登場するのも分からなくはないですが、単なる子供番組にも、そんなポリティカルな話が思いっきり影響しているのは、驚きではあります。

ところで、上述のリンクのサイトにさらっと「ホーネッカーは訪日の際、マツダ323(日本名 マツダ・ファミリア)を10,000台オーダーしたと書いてあるのを発見。日本訪問時に首相が日本車を国民の為に買い付けて帰るなんて、計画経済ならではの行為ですよね。