保守的な夜の保守的でない舌の話

デュッセルドルフ近辺では今週は伝統行事、St. Martin祭の週です。この週は、暗くなると町のあちこちで子供たちが集結し、手作りのランタンに灯りを燈して街を練り歩き、そこここの家々でお菓子や果物を貰う風習があります。ハロウィンに似ているのですが、聖マルティンというローマ時代の騎士の逸話にちなんで、子供たちに「自分が他者よりも多くを持つ時は、彼らに自分のものを分け与えるべきだ」ということを学ばせる行事なのだと聞きました。この辺りはカトリックが強い保守的な地域なので、今でもこんな伝統行事を毎年きちんと行っているようです。

我が娘はランタンを持って行進するには、幼すぎるので、家の前の教会まで行進を見に行きました。St. Martinに扮したおじさん、馬、楽隊に先導されての行進なので、晴れていれば、情緒のある行進なのだろうけれど、当日は生憎の雨。皆、ランタンにカバーをつけて行進しているし、見学の人達でごった返しているため、早々に引き揚げることにしました。ちょうど日本から友人が遊びに来ていたこともあり、いかにもドイツっぽいイベントを一緒に体験できたら楽しいだろうと思っていたのですが残念。

ということで、気分一新、その後は家に帰って夕食を始めることにしました。既にドイツ入りして5日目になる友人の胃は、連日のお肉料理に疲れているに違いないと思い、献立はちらし寿司、お吸い物、カブと豚バラの煮物・・・と純和風を用意。家の外はお祭の音楽が流れ、とても欧州っぽいのに、このギャップ(笑)

さぁ、戴こうかという段になって、近所の同僚が息子と一緒に、St.Martinの季節の菓子パン「Beckman」を持って、遊びに来てくれました。純和風献立は、ドイツ人の舌には合わないかなぁと思いましたが、せっかくだし、夕食を一緒に食べていってもらうことにしました。

日本人じゃない友人を家に呼んでご飯を食べたり、自分がお料理を持ち寄る時は、
1.子供の頃の無垢な自分の舌が初めて食べた時も美味しいと思ったもの
2.かなりエキゾチックに振れつつも、たまに彼らが外食で食べるもの(インド料理、お寿司やお味噌汁などもこの類)
3.その人の国の料理に共通している点があるもの(ドイツ人なら豚肉等)

と、この三つをなんとなく念頭に置きながら献立を考えたり、少しアレンジを加えて準備することにしています。でも、今回はその準備がない。ちらし寿司に混ぜ込んだ甘辛く煮たシイタケやドイツ時料理のスープではありえない薄味のお吸い物なんて、ダメなんじゃないかなと心配しながら出しました。

ところが何のことはない。彼女の為に用意したフォークやスプーンも断り、皆と同じくお箸を上手に使って、難なく全て完食。美味しいわ〜と言って、心配していたシイタケの煮方まで詳細に尋ねる始末。挙句の果ては、「昆布と鰹節で取った出汁」というものをどう説明しようか、悩む私に「あぁ〜DASHIね!」と、助け船を出してくれました(笑)お見逸れしました!丁寧に取った出汁の繊細な旨味って、分からないだろうなぁと勝手に思い込んでいたので、反省することしきりです。

日本食レストランが充実しているデュッセルドルフは特別なのかもしれないけれど、もしかしたら、思った以上に私の周りの同世代ドイツ人達の舌は保守的ではないのかもしれないと思わせるSt. Martin祭の夜でした。

どんな時も誰かと何かを「おいしいねぇ〜」と言いながら食べるのはとても楽しいものです。今度、日本から持ち込んで、大事に使っている羅臼昆布(海外ではこんなものが大事だったりするのだ)で、更に日本っぽいものをごちそうしてみようかな〜♪