右脳さん、こんにちは

先週は大学院で、新入生教育プログラム、通称「Boot Camp」が行われ、大忙しの一週間でした。

プログラムと言っても、ある課題を与えられて、それをチームで考えたりリサーチを行い、その結果を最後に講堂で発表すると言う、ただその一点のみなのですが、アート&デザイン系出身者、いわゆる「右脳さん」が多数を占めるチームの中での共同作業は思いの外、大変で、強烈な一週間となりました。

例えば、与えられた課題に対して、私達、左脳人が順を追って、定義したり、分析して、物事を説明する枠組みを作ろうとするのとは違い、他のアート&デザイン系右脳人メンバーは、枠組みを作ることを拒否し、「面」の重なりの層として概念を作りたいと主張するのです。「何故枠組みを作るのを拒否するの?」「何故、物事を先に定義しないの?」「何故『面』なの〜??」。。。。と、右脳人達が、いとも簡単にお互いの発想を理解し共有する中で、左脳系の私と、やはり同じく社会科学系出身の韓国人のチームメートとの二人だけが理解から取り残される状態。

そもそも仕事柄、車、グラフィック、映像、イベントと、多分野のデザイナー達と、これまで一緒に色んなプロジェクトをこなしてきました。彼らの思考方法には、ある程度馴染みがありますし、そもそも、彼らと働く中で感じた、クリエイティブ領域の人達が持つDesign thinkingに興味があって、今の大学院を志望した背景があります。ですが・・・・良く考えてみると会社の仕組みや仕事での多数派は私達左脳系です。右脳派が多数を占める中で物事を進めた経験はありませんでした。それ故、今回のBoot camp中、何度も「これがDesign Thinkingか!」とワクワクする瞬間を味わいながらも、上手く議論に乗り切れないもどかしさは、何とも言い難いものでした。

結局、自分の中で全てを明確にしながら進めた訳ではありませんが、「折角、こんな不思議な世界(笑)に来たのだから」と、右脳さん達のメンバーのコンセプトに乗っかって、プレゼンテーションを完成させました。結果、左脳系の私達が最初に思い描いたものより、ずっと生き生きしたものになり、そして勿論、見た目にも美しいものになり、面白い経験をさせて貰いました。

実際の社会では右脳さん・左脳さんのどちらかだけに偏っては、物事は上手く機能しませんが、どっぷり合理主義的思考方法に浸かってきた左脳人としては、この一週間はガツンとやられ続けた日々でした。一つ一つ、定義したり、理屈を重ねて合理的に物事を「処理」する考え方の中では、ともすると、人間的な感覚は後回しにされがちですが、右脳さん達には、その「感覚」こそ最重要課題の様に思えました。「簡単」「心地良い」「ワクワクする」「偶然」「体験」「誰もやったことが無い」。。。。。一週間、たとえ、話の進行上、邪魔になったとしても、これらの点を離そうとしない、時として子供の様な右脳さん達は私にはとっても新鮮な存在でした。うん、うん、そうだよね。「心地良さ」を犠牲にして、「簡単さ」を幼稚さと思い込み、私達はどれだけ自分の住む世界を居心地の悪いものにしてきたんだろう。。。。

この一週間は、左脳人メンバーにとっては、まさしくBoot Campでした。もう一人の左脳さんは、Camp終了後、修士論文のテーマをService DesignからDesign Thinkingに変更すると言ってましたし、私は既に選考試験の段階である程度、詳細な研究計画書を出していましたが、その既にある予定調和的な計画に沿って研究を進めるのを止めることにしました。どうやら、この不思議の国では私が今まで「知っている」と思っていたことは、「知っていない」ことのようなので、もう一度、既にある認識を壊すことから始めたいと思うようになりました。それがどんな結果となるのか、先行きが見えなくなりましたが、それ以外のアプローチは取りたくない、のっぴきならない感情が芽生えてしまいました。